「レザークロック」の企画経緯と
コンセプト設計についてお話します。
こんにちは。ヤマモトです。
Re:CENO productから、久しぶりの雑貨プロダクト
「レザークロック」をリリースします。
ヌメ革を使ったきれいなナチュラル色が特徴で、牛革
の素材感を活かした、シンプルデザインの時計です。
本日のマガジンでは、このレザークロックの企画経緯と
コンセプト設計を紐解いていこうと思います。
目線の先に、柔らかな風合いを。
「ヌメ革」で作った掛け時計
この時計は、アルゼンチン産の牛革を植物性のタンニン
で鞣した「ヌメ革」で出来ています。
革製品にありがちな「てかてか」とした塗装は施さず、
革本来の風合いが残るように、オイル塗装を1点1点に
手作業で塗布し、丁寧に仕上げています。
お部屋に飾ると、柔らかな意匠と、素朴でありながら
こだわりを感じさせる佇まいがあり、インテリアのス
タイリングに、深い味わいを与えてくれます。
ちなみに「ヌメ革」とは「タンニン鞣し(なめし)」
を施した革のことを指します。
「タンニン鞣し(なめし)」は、植物に含まれる水溶性
の化合物を利用して、動物性のタンパク質と結合させる
鞣し技術のこと。
使い込んだ時間とともに、革が柔らかくなりツヤが増し
てくるので、経年変化を楽しめるのが特徴です。
革本来の「質の良さ」や「時間の経過による味わい」を
引き出せるのは、ヌメ革だからこそ。
使いはじめのその日から、まるで以前からその場所に
あった様な、馴染みの良い空気感を出してくれます。
また、経年変化によって、徐々に深い色合いに変化して
いわゆる「飴色」に変わっていくのも楽しみのひとつ
です。
インテリア性を向上させるという意匠性だけでなく、
日々の使い心地にもしっかりと配慮しています。
均一に入った12本のラインによって時間を分かりやすく
し、遠くからでも時間をしっかりと認識できる視認性を
与えています。
見心地がよく、使い心地もよいこの時計は、長く暮らし
を支えてくれるアイテムになると思います。
試作は、思ったりよりも難航。
苦労の末に、完成しました。
さて、企画経緯をお話するために、時を戻しましょう。
この時計の企画がはじまったのは、2023年のこと。
「時計でありながら、お部屋のアクセントになるもの」
「でも、奇をてらった派手なデザインは好みでない」
「長く使っていくほどに、愛着が増していくもの」
といった普遍的かつ愛着の沸くような時計を作りたい
と考えていました。
そして、さまざまなイメージをデザインしていく中で
思いついたひとつが「革を使った時計」でした。
リセノのレザープロダクトたち
革という素材は、インテリアにおいてはポピュラーな
存在でありながら、実は、時計としてレザーを用いた
ものは、世の中にそう多くありません。
また、あったとしても、デザインが凝りすぎていたり、
ギラギラとしていたりと、イメージに合うものがなか
なかありません。
世の中にないのであれば、試しに作ってみようという
ことで、試作したのがはじまりでした。
試作にあたって相談したのは、リセノではおなじみの
オリジナルレザーアイテムの制作をお願いしている京
都の革職人さん。
レザーティッシュケースと、レザールームシューズは
すべてこの職人さんが、一点一点手作りで作ってくれ
ています。
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私 :「レザーの時計を作りたいんですよね。」
職人:「なるほど。 ひさしぶりのご依頼ですね!」
私 :「世の中には良いレザーの時計がなくて、
それをこうシンプルな感じで、経年変化も
する感じで......(うんぬんかんぬん)」
職人:「いつも通り、ややこしい案件ですね(笑)
でも、一回チャレンジしてみますね。」
職人さんには本当にお世話になっていて、僕の毎度おな
じみの「ふわーっとした要望」であっても、嫌な顔ひと
つせずに、前向きに取り組んでくれます。
本当にありがたい存在で、感謝しています。
この日は、そんな大枠のイメージを伝え、その場で革
を選んだりしながら、試作の依頼をして、その日は帰社。
それから、1か月ほどして、試作1号が出来たから、
見に来てほしい。という連絡が入ったのでした。
呼び出されて、職人さんの工房に行くと、見慣れない
大きな木の箱が置いてありました。
私 :「これ、何ですか?」
職人:「これは、型押しの木枠です。
このくり抜いてある部分に水を含ませた革を
挟んで、上から重しを置いて、一晩置くと、
こんな感じに革が時計の形になるわけです。」
私 :「おー!すごい! 時計の形になってますね!
この木型はどうしたんですか?」
職人:「知り合いの木工作家に頼んで作ってもらいました。」
職人:「なんと!」
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気軽に頼んだレザー時計の試作を、職人さんは木型の
製作まで行って、手間暇かけて作ってくれていたので
した。
そして、このファーストサンプルを会社に持ち帰り、
ハンズで買ってきた時計の針とムーブメントをDIYで
取り付けて、出来上がったのが、この時計です。
レザー時計 試作第1号
いかにも手作り感あふれる試作の第1号。
職人さんが工夫を凝らして、昔ながらの作り方でカタチ
にしてくれたものに、手作業でムーブメントや針を付け、
時間も手で穴を仮で開けただけのものでした。
いざ、ひとつを形にしてみると、いろいろと問題が
見えてきました。
手作業なので、サイドのカットもふにゃふにゃ
ひとつは、昔ながらの手作業での工法なのでどうして
も端が均一な出来栄えではなく、販売するには品質が
足りていません。
また、このやり方では、1つ作るのに一晩中水につけて
おく必要があり、とても量産できるものではありません。
私 :「きれいに整形しながら、数を作るのって、
なにか方法ありますか?」
職人:「それだったら、専用の機械で一気にプレス加工
した方が良いでしょうね。金型を作って、一気
に革を抜いちゃう方が、品質も安定しますよ。」
手作業での製作からはじまったレザー時計は、職人さん
からのアドバイスをもらい、そこからレザーのプレス加
工ができる工場を探す方向へ。
その後、リセノの開発担当がレザーのプレス工場を探し
だし、そこで革探しから希望の金型の製作などなど、
長い道のりを経て、試作2号を作ってくれたのでした。
レザー時計 試作第2号
それから、数か月。
プレス加工で作り上げた試作2号が、こちらです。
きれいにレザーはカタチを保っており、イメージして
いた通りの仕上がりです。
横のふにゃふにゃしたのもなくなり、全体的に硬さも
でたため、品質も向上しました。
また、プレスの専用機械で成形するので、量産するのも
安定した品質で、数を作ることができます。
職人さんへの相談から、手作りではじまったレザー時計
のプロジェクト。この時点で、すでに1年ほどが経過し
ていたのでした。
クオリティの高い革を探し、より美しく。
オイル塗装で味わいも足しています。
さて、手探りではじまったオリジナルのレザー時計の
企画ですが、プレス加工によってきれいに整形されて
製品らしくなって来ました。
ただ、この試作分を見ていただくと分かる通り、表面
が、最終製品化したものとは違い、かなり赤みを帯び
ています。
この赤みを取り除き、美しいナチュラル色に仕上げる
ために、これまた苦労しました。
まずは、表面にやすりを掛けて、赤みを取り除くアプロ
ーチをしましたが、最終製品のようなきれいなナチュラ
ル色はでませんでした。
そのほかにも、薬品を用いたり、サンディングをしたり
と、さまざまな加工を試すものの、どれもうまく行かず。
最終的には、原点に立ち返り、革そもそもの調達を見直
し、質の良い牛革を選別し、オイルにて塗装仕上げをす
ることで、きれいなナチュラル色に仕上げました。
また、さらにその革の美しさを引き出すために、余計な
加工をせずに、革本来の美しさを引き出すために、手作
業でのオイル塗布をしています。
厚さ約4mmの革を、自然の風合いを残す様に、加工は
すべてハンドメイドで、シワやシボ等もそのまま使用
しています。
シンプルな仕上げなので、革特有の飴色への経年変化
も、もちろんしていきます。
プレス加工のような最新の機械を使いながらも、結局
最後のところは、職人による革の選別、手作業での仕
上げというところに落ち着くわけです。
やはり、ものづくりというのは面白いものです。
レザーに合うような針を求めて、
真鍮製の針に「古美加工」を。
さて、レザーの本体についてのストーリーを書いてき
ました。手作りからはじまって、様々な試行錯誤を重
ねていくことで、良いものが出来上がってきました。
ただ、これで終わりではありません。
時計の重要な構成要素である「針」についても、こだ
わりの仕様がありますので、そちらについても書いて
いきたいと思います。
当初のデザインでは、針はシンプルな「ブラック」を
予定していました。
レザーのナチュラルと、ブラックの相性が良さそうで
あったからです。
ただ、いざ試作を見てみると、どうも物足りない感じ
が否めません。悪くはないけれど、もうひとつ工夫が
足りない感じです。
シンプルなレザー時計ですから、針自体もシンプルで
あると「深み」のようなものが足りない気がしたのです。
開発研究のため、一度やってみるの図
そこで、より深みのある針を試してみるべく「真鍮針の
ヴィンテージ加工」に、DIYで自らチャレンジしてみました。
Youtubeでやり方を検索しながら、真鍮のエイジングの
方法を調べると、「黒化液」と「硫黄系温泉の素」を使
った加工方法が出てきました。
この加工は「古美(ふるび)加工」と呼ばれる加工で、
着色ではなく、化学反応によって、真鍮を使い込んだ
ような風合いに変化させるのです。
真鍮の針に、丁寧に化学反応を起こしていきます。
この加工を施すことによって、ぴかぴかだった真鍮の
針が、長年使いこんだような鈍い光を放つ真鍮の針に
変わります。
筆を使うことで、あえてムラを出しています。
「古美加工」を施した針を、ナチュラルな色味のレザー
に合わせてみると、シンプルでありながら、深みを感じ
させるような素晴らしい仕上がりに。
手作業のDIYアイテムで実施した「古美加工」を、工場
に送り、やりたいことを伝えることによって、工場でも
ハンドメイドで、古美加工を行ってもらっています。
本体と合わせると、ナチュラルでシンプルなヌメ革の
本体と、古美加工を施した真鍮針のコントラストがと
ても美しく、良い意匠に仕上がりました。
ひとつひとつ妥協せずに積み重ねることで、長く愛せる
インテリア製品が出来上がるのです。
ムーブメントは、安心の「セイコー」。
スイーブムーブメントで、寝室でも安心。
レザーの素朴さに、古美加工の真鍮の趣きを加えた
新作レザークロック。
見た目に美しい時計ですが、長くご愛用いただける様に
製品としての「品質」にも、きちんと配慮しています。
時計の機能を担うムーブメントには、日本製のセイコー
社製スイーブムーブメントを採用しました。
安価な海外ムーブメントもありますが、そこはあえて
国産の上質なものを使用しています。
秒針がなめらかに動くタイプのムーブメントで、
「カチカチ音」がないため、寝室などにも最適。
月間時間誤差は20秒以内という高精度なものですので、
長く安心してご利用いただけます。
見る場所からの距離に応じて選べる
「22cm」と「30cm」の2サイズ
さて、いよいよ完成してきたレザークロック。
その後、最終的にサイズは2つのタイプを作りました。
時計は「掛ける場所」と「見る場所」の距離によって
最適なサイズが異なります。
22cmサイズ
小さいサイズは、直径22cm。
こぶりでかわいらしいサイズです。
例えば、ダイニングに座って、近くの壁に掛けて見る
ような場合は、このサイズがぴったりです。
また、リビングに掛けてソファーから見る場合なども、
こちらのサイズが最適です。
寝室などの小さなお部屋でも、こちらの小さなサイズが
おすすめかなと思います。
本棚などにディスプレイするときにも、こちらの小さな
サイズを立て掛けると、ディスプレイを兼ねて、きれい
に飾ることができます。
30cmサイズ
大きいサイズは、直径30cmです。
視認性が高く、LDKなどに使ってもらうことをイメージ
しています。
例えば、LDKの場合は、リビングとダイニングで1つの
時計を使うことも多いでしょう。
リビングに掛けて、ダイニングから見るような場合は、
このくらいの大きさがないと、見づらかったりします。
ですから、LDKどちらからも見たいような場合は、
30cmタイプが最適です。
ダイニングに掛けて、リビングから見るような場合も
同様ですね。
オリジナルの化粧箱入りで、
贈り物としてもおすすめです。
お引越し祝いや、結婚祝いなど、新しいお家での生活が
スタートするときのお祝いは、意外と頭を悩ませますね。
この時計は、シンプルだからこそ、万人の好みに合いや
すく、どんなお部屋にもなじんでくれます。
また、お祝いだからこそ、長くいつまでも使えるものが
もっとも縁起も良く、ありがたいもの。
贈られた人が、長く使ってもらえることを想像すると、
嬉しくなりますね。
そんな贈り物のシーンを想定して、そのままプレゼント
しても絵になるような、美しい化粧箱を専用で作りました。
もちろんラッピングも承っていまして、丁寧にお包み
して、お届けいたします。
遠方で手渡しできない場合でも、美しい箱でお送りし
ますので、大切にしている気持ちがきっと伝わると思
います。
こだわりを詰め込んだ掛け時計。
2024年9月6日より予約発売を開始します。
というわけで、新作のレザークロックのコンセプトと
企画設計のポイントを書いてみました。
シンプルな見た目の裏には、製品として完成するまで
のたくさんの苦労があります。
それらを内包しているからこそ、なお一層に美しい佇ま
いを見せてくれるのかもしれません。
デザイン意匠に偏重がなく、どんな方にも喜ばれる様
なアイテムですし、お部屋のポイントスタイリングに
も使いやすいディスプレイアイテムにもなる品です。
とても良い時計が出来上がりましたので、ご検討いただ
けると嬉しいなと思います。
9月6日より予約販売を開始いたします。各店舗にも順次
展示がはじまりますので、興味のある方は、ぜひ店頭で
ご覧いただければと思います。
Re:CENO product|レザークロック