ペーパーコードチェア「PAPERCORD CHAIR」の企画経緯と
コンセプト設計についてお話します。
こんにちは。ヤマモトです。
Re:CENO productから「WICKER CHAIR」に続いて
2作目となる新作のオリジナルチェアをリリースします。
「WICKER CHAIR」は、座面と背もたれにラタンを
張り込み、ダイニングのアクセントとなるデザインに
仕上げたことで、大変ご好評をいただいております。
今回の「PAPERCORD CHAIR」は、背もたれには、
すっきりとしたウッドフレームを配し、座面には
「ペーパーコード」を張ることで、全体的にすっきり
としたデザインに仕上げました。
本日のマガジンでは、この新作チェアについて、企画
の経緯とコンセプト設計について紐解いてきます。
憧れの「ペーパーコード」を採用して、
北欧アンティークチェアを復刻しました。
さて、みなさんは「ペーパーコード」という言葉を
聞いたことがあるでしょうか?
上の椅子の座面に張られているのが「ペーパーコード」
で、簡単に言うと「樹脂を含ませて撚った紙ひも」の
ことです。
ペーパーコードは、第一次世界大戦中に生産される様
になり、当初は、麦などを束ねる紐として利用されて
いました。
椅子の座面に使われはじめたのは、1940年代頃からだ
そうで、従来の植物の茎や、葉を原料として作られた
ものよりも品質が均一なことから、椅子にも用いられ
る様になったそうです。
それから、約70年。今日に至るまでペーパーコードを
使ったチェアは生産され続け、また、とても人気の
ある椅子として、長く愛され続けています。
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ペーパーコードが張られたチェアとして特に有名なの
は、デンマークデザインの椅子たちです。
例えば、リセノでも取り扱いのあるボーエ・モーエン
センデザインの「J39」や、
ハンス・J・ウェグナーが最後にデザインした「PP68」
も、ペーパーコードを張ったチェアです。
また、日本でも人気の高い「Yチェア」も、代表的な
ペーパーコードを使用した北欧デザインチェアです。
(こちらもウェグナーデザイン)
僕も自宅でYチェアや、J39、PP68を使っていて、
毎日使う中で、ふと見るたびに美しさを感じますし、
座り心地もしなやかで、疲れにくい印象です。
「いつか、ペーパーコードを張ったチェアを作りたいな。」
そう思っていたのですが、北欧の工場は高額ですし、
日本に入れてくるための輸送費も高く、何より工場
とのツテもありません。
憧れてはいるものの、なかなか作る道筋がなかったのです。
が、きっかけは突然にやってきました。
先日発売した「WICKER CHAIR」のメーカーさんと
お話していたときのこと。
メーカーさんと新製品開発について相談をする中で、
「うちの工場は、ラタンを張る技術を長年培ってきた
工場です。ラタンと同じ要領で、ペーパーコードも
張れますよ。実績もありますし!」
という話が偶然の様にふって降りてきた(!)のです。
たしかに、ラタンも、ペーパーコードも、同じひも状
ですし、張りの技術が同じでも不思議ではありません。
「ぜひサンプル製作をお願いします!」
と、その場ですぐに依頼し、一気に開発へと進んだの
でした。
「ペーパーコード」のチェアが長く愛される
のには、理由があります。
さて、北欧の名作チェアでも使われるペーパーコード
ですが、なぜ長きにわたって人気なのでしょうか?
ポイントは、3つあります。
まず最初に思い浮かぶのは「デザイン的に美しい」こと。
板座のチェアや、ファブリックやレザーのチェアとは
異なり、細いコードを編み上げたデザインは、見た目
にも軽やかで、かつ、ディテール感を感じさせます。
シンプルだけれど、編み込みという手仕事の味わいが
あり、ペーパーコードのチェアは「華」があるのです。
今回のチェアも、もともとは北欧ヴィンテージ品の
復刻デザインで、上の写真を見ていただいても分かる
様に、シンプルな美しさは、最大の特徴です。
そして、2つめの理由は「座り心地が良い」ことです。
ペーパーコードには弾性があるため、お尻の形に合わ
せて自然にフィットし、疲れにくいのです。
また、編み座で隙間があるため、夏は涼しく感じ、
冬は暖かく感じるのも嬉しいポイントです。
ペーパーコードチェアを多くデザインした北欧は、
日照時間がとても短く、家の中で過ごす時間がとても
多い地域です。
その地域で長く愛されていることからも「長く座って
いても快適」ということをお分かりいただけるかなと
思います。
そして、良い点の3つ目は「軽い」ことです。
チェアは毎日動かすものなので、重いと意外とストレス
になったり、音鳴りが気になったりします。
その点を解消できているのも、人気のポイントです。
このように、ペーパーコードは良い点の多い良質な
チェアなので、長くにわたって多くの人に愛用されて
いるんですね。
ちなみに、ペーパーコードの編み方はいくつかあるの
ですが、今回は「鹿の子編み」を採用しています。
Yチェアのように「封筒編み」にしても良かったのです
が、封筒編みは、中央が沈み込むように編まれていて、
割と「リラックス」に設計が向いています。
それに対し「鹿の子編み」は、フラットな編み方の為
気持ち「しっかりめ」の座り心地です。
リモートワークなどが増えた昨今、デスクにチェアを
持っていって仕事をされる方も多いと思います。
軽さも特徴のひとつなので、ダイニングとデスクに
それぞれチェアを買わなくとも、必要な時だけ持ち
運んでいただければといいなと思い「鹿の子編み」を
選択しました。
意外と強くて、安心です。
ペーパーコードの「お手入れと張り替え」について
今回のペーパーコードは「防水・防汚加工」を施して
たものを採用しています。ある程度の水分や汚れに
対しての耐性を備えています。
完全に水をはじく仕様ではありませんので、コーヒー
やお醤油などの液体をこぼした時は、色素がペーパー
コードに染み込んでしまう前に、軽く濡らした布で
叩くようにして、吸い込ませて、汚れを取り除きましょう。
布で擦ってしまうと染み込みの原因となるので、
しない様にしてください。
また、買った直後に「ユニタス テキスタイルプロテク
ター」を振りかけていただければ、さらに汚れが落ち
やすくなるので、万が一飲み物などをこぼしてしまった
場合にも安心です。
1本あれば、4脚を1年以上保護できますので、ぜひ
ご一緒にお買い求めいただくことをおすすめします。
また、ペーパーコードは10年~20年くらいを目安に、
張替えをおすすめします。
張替えの際は、当店にご相談いただければ、有料とは
なりますが、専門業者と連携のうえ、新しいペーパー
コードに張り替えいたします。
より快適な座り心地のために、
「背もたれ」や「サイズ」をリデザインしました。
このチェアの曲線を活かした優しいフォルムは、
北欧アンティークチェアを参照しています。
北欧アンティークには、無名のデザインながらも
美しい意匠の家具が多くあります。
こちらもそんなアンティーク品をイメージソースと
して用いて、そこを起点として座り心地を高めるため
に素材の選定、サイズの調整や設計の見直しを行い
本製品として仕上げています。
背もたれには自然なカーブをつけたので、
背中のラインにフィットします。
背もたれには自然なカーブをつけ、背中のラインに
フィットするように設計しています。
2本のチーク材が、背中にフィットする位置を探して、
自分たちでカットしながら、ちょうど良い位置を探り
ました。
そして、座面も後方に向かって少し角度を付けている
ので、自然と体が後ろに倒れ、リラックスできる様に
設計しています。
ペーパーコードの張りのある弾力により、腰が落ちず、
割としっかりとした座り心地のチェアです。
ただ、それでいながらも、ダイニングでゆっくりと
食事を楽しんでいただける様に、できるかぎり体の
負担を減らせるように設計をしています。
ゆとりのある幅50cmサイズと、
体にフィットする角度と曲線設計
使い心地としてこだわった点として、座面幅を通常の
チェアよりもかなりゆとりのある<50cm>に設計し、
体の大きな男性でもゆったりと座っていただける様に
配慮しました。
座面も中央に向けて自然なカーブをつけることで、
太もも裏が痛くなりづらい仕様にしています。
シンプルな意匠ながらも、サイズ、曲線、角度を
絶妙に調整することで、座り心地の良いチェアに
設計しました。
使うほどに味わいが深まる「チーク材」
前述の通り、このチェアは「チーク」の無垢材を使用しています。
チークは、世界三代銘木の一つに数えられる高級材で
油分を多く含んでいるため水分や湿気に強く、かつて
は、船の甲板材としても使用されていたほど耐久性に
優れた素材です。
木目は緻密で美しく、しっとりとした感触は、ながく
使っていくほどに深い味わいを増していきます。
チェアは長く使っていくものですから、使うほどに
愛着のある1脚になると思います。
重量はわずか 3.7kg。
この軽さが、家事の負担とストレスを軽減します。
ダイニングで使うチェアは、暮らしの中心で毎日動かす
ので、その重量は、実はとても大事です。
座ったり立ったりする時はもちろんのこと、掃除機を
かける時にもチェアを動かしますよね。
チェアが重いと、掃除機をかけるのも一苦労ですし、
毎日のこととなると、かなり負担になります。
今回の企画では、なんとかチェアの重量を軽くして、
女性でも掃除機をかけながら、片手で「ひょいっ」と
持ち上げられる様な利便性を実現しようと考えました。
まずは僕自身もチェアというものの設計を理解する為
に伝統的な名作チェアから、現代の著名デザイナーの
新作チェアなど、計10脚以上(!)を購入し、自宅で
使いながら、1年以上にわたって、設計や心地などを
体感・研究しました。
様々なチェアを紐解いていく中で、ひとつの答えに
たどり着いたのは、チェアの重量に大きく関わるのは
「座面」であるということです。
多くのチェアは「板座」という土台になる木製座面が
あり、そのまま木部に座ったり、上からファブリック
やクッションを張っています。
木製の板座は丈夫で、これはこれで良いのですが、
どうしても木部分が増えると、チェアは重くなります。
これでは、女性が片手で「ひょいっ」と持ち上げる
ことは、かないません。
そこで今回採用したのが、ペーパーコードです。
ペーパーコードは編み上げることでしっかりとした
強度を持ち、また、長く品質が落ちず、軽量な素材です。
ペーパーコードの自然な弾力により、お尻のアタリも
非常に良いので、ウレタンクッションなども省くことが
出来て、より一層軽量化しています。
これらの工夫によって、女性でも片手で持ち上げられる
ほどの大幅な軽量化に成功しています。
また、軽量化したことにより、もうひとつ利点が
生まれました。
それは、チェアを後ろに引いた時の「音鳴りの軽減」です。
現代のフローリングは、オークなどの無垢材を張って
いるご自宅も多いと思います。
昔のようにツルツルのフローリングではなく、無垢材
の床は、木本来のあたたかみを感じさせてくれる為、
内装のクオリティを格段に高めます。
そのため、現代のおしゃれなリビングやダイニングは、
ほぼ無垢材を採用しています。
無垢材フローリングで問題になるのが、チェアを引いた
時に生まれる「摩擦による音鳴り」です。
重量のあるチェアは、無垢床との摩擦が大きくなり、
大きく嫌な「音鳴り」がします。
毎日のことなので、一度気になりだすと、この音鳴り
は、意外とストレスになります。特に、僕のような
神経質寄りな性格の人には、たまりません(苦笑)
その点、軽量なチェアは、無垢材フローリングとの
摩擦が少なく、音鳴りも小さくなります。
ちなみに、僕が数か月自宅で実験した中でおすすめの
方法としては「カグスベール」のような床との摩擦を
軽減するシールを脚底に張ると、音鳴りがさらに軽減
されるので、おすすめです。
「スーッ」と滑るようにチェアを動かせる感触は、
なかなかの快感です。
チェアの座り心地や、見た目にこだわる方は多いと
思いますが、このように日々の暮らしから見つめ直す
と、実は「重量」はかなりポイントです。
とても軽いチェアに仕上がったので、ぜひその点にも
注目いただければと思います。
同じデザインの「スツールとベンチ」も作りました。
同じ意匠にて、スツールとベンチも作りました。
チェア2脚×ベンチでダイニングを構成したり、
補助的な役割としてのスツール使いもおすすめです。
また、基本的なフォルムは「WICKER CHAIR」と同じ
意匠ですので、合わせてコーディネートしていただく
のも、リズムが生まれて良いかと思います。
「PAPERCORD CHAIR」
2021年5月19日より予約発売を開始します。
というわけで、新作チェアについて、企画の経緯と
コンセプト設計について紐解いてみました。
生活の「不」を解消しながらも、座り心地もよく、
デザインとしても美しい製品に仕上がりました。
座面などの張替えも国内で対応可能ですので、
長くご愛用いただけると思います。
東京店・京都店での展示はすでに開始しております
ので、気になる方は、ぜひ店舗へお越しいただき、
体感いただければと思います。
また、オンラインでは2021年5月19日から順次予約で
の販売を開始しまして、6月中旬頃にはお届けできると
思います。
ぜひご検討いただければと思います。