【蚤の市で見つけた偏愛品】
10個の小さなレンガ
僕の古いもの歴は、この10個の小さな
レンガからスタートしているものだから、
話せば、やはり少し長くなる。
ヴィンテージに目覚めたのは、リセノという
少し変わった会社に勤めはじめてからのこと。
インテリアを偏愛する人たちの巣窟。
そんな諸先輩たちと「インテリアツアー」なる
布教の道中をともにしたのは、まだ入社してから
1ヶ月と間もないころだ。
蚤の市をスタート地点として、古いものや
インテリアを扱う各地のショップを
レンタカーでひたすら巡る、偏愛者たちの行軍。
新人の身には、ちょっと刺激が強いもんで。
オーバーヒートした頭で帰宅した僕が、
唯一握りしめていた戦利品が
この小さなレンガたちだった。
まだこの世界に疎かった自分が、
「なんかちっちゃくてかわいいから」という
無邪気な理由で、初めて迎えいれた古いもの。
しかし、改めて見ると、これは何なのだろう。
家を作るには、あまりにも小さい。
そして、どこにどう飾ってもまるでしっくりこない。
どこかで、沼にハマる音がした。
「インテリア」と「古いもの」という、2つの沼。
沼をさまよいながら、新しいことを
覚えるたびにレンガをいじる。
三角飾り、レピテーション、均等配置...。
まるで、積み木だ。
インテリアの嗅覚を育てる、10個の小さな玩具。
レンガたちは少しずつ、部屋に
馴染むようになっていった。
あれからそろそろ2年が経つ。
今でもときどき、レンガを組み替える。
小さなレンガの形をした自分の初心。
インテリアは、遊びだ。
僕はまだまだこの沼を、楽しむつもりでいる。