【蚤の市で見つけた偏愛品】
琥珀色のトックリ
暑さを帯び始めた日差しが照る、
平安・蚤の市の一角。
日中の鋭利な光を受けて、
そいつはひときわ、琥珀色に輝いていた。
アンバーガラスは「古いもの」の常連顔だけど、
こいつは、何やら変わった趣き。
不思議なガラスのゆらめき。
それを手に取ると同時に、奥から
物腰柔らかな、おばあちゃん店主が滑り出てくる。
聞いてないけど、いろいろ教えてくれる。
言ってないけど、値引いてくれる。
蚤の市の流儀には、蚤の市の流儀で応えるほか無い。
「じゃあ、これください」
岡崎公園を後にしながら、
おばあちゃんの言葉を反芻する。
昭和、手作業、注ぎ口のヒビ、徳利。
なるほど、トックリ。
残念ながら、お酒はあまり嗜みません。
でも、あんまり綺麗だったもんで。
新しい命を吹き込むのが
「古いもの」の醍醐味だと、
誰かが言っていた気がする。
それは偏愛か、ただのエゴか。
思索の帰路を辿り、家につく。
日本酒の代わりに、水を注ぐ。
愛がなければ、花を添えたりはしない。
今日から君は、一輪挿しです。