【蚤の市で見つけた偏愛品】
ラタン編みのティッシュケース
いつかの蚤の市。
まわりの賑わうお店に比べ、
やや控えめな雰囲気のお店があった。
いつもなら、さらっと通り過ぎてしまうけれど、
ピタッと足が止まる。
そのわけは、店番を任され
すこし心細そうな、小さなおばあちゃん。
遠くへ目をやり、まだかまだかと
店主の帰りを心待ちにした表情だった。
ところが、僕と目が合った途端、一変する。
「ありがとう。」
くしゃっとシワを作りながら、
そう言って、柔らかく微笑みかけてくれた。
「こんにちは」「いらっしゃい」ではなく、
「ありがとう」とは、なんと素敵な...。
心奪われ、お店を覗くと、めずらしく
僕より先に、連れが「これが欲しい!」と言う。
僕も、ティッシュケースに使おうと
すぐイメージが湧いて、お迎えすることに。
帰り道、連れに「なんで欲しかったの?」と聞くと、
「おばあちゃんから買いたかったから。」
なんて、一丁前なセリフを言うものだから、
思わず笑ったけれど、とても共感した。
わが家のティッシュケースは、生活感を抑えながら、
あの日の帰り道の思い出と、
あの笑顔を思い出させてくれる宝物です。