【食べるしゃべる眠る。】第四話|ぼくと妻と娘の実況中継
娘:上でテレビみてくるー
妻:お風呂洗ってくる
夕食後。
ぼく:ふくれたな、ふー
テレビの部屋から"のび太"の甘えた声が、
風呂場からシャワーの勇ましい音が聴こえてくる。
ぼくは、腰を上げ、台所で食器洗いを始める。
夕食後の食器洗いは"そのときできるほう"が
するようになっていて、"そのときできるほう"が
ぼくであることは多い。
不器用さに自信のあるぼくだが、
"そのときできるほう"として豊富な経験を
積んできたこれは、なかなか迅速かつ
的確なレベルに達していると言っていいだろう。
洗ってると娘が戻ってきて、
テーブルで紙に何か書き始めている。
ほどなくして妻も戻ってきて、
ぼくが洗った食器を無言で拭いてゆく。
いつもの連携と、二人の"おしゃべり"が始まる。
妻:プラごみ袋もう満杯やわ。
どれも過剰包装やねんなあ、簡易でいいのに
ぼく:圧縮機能で容量削減できるゴミ箱があるって
ニュースで言ってたわ
つい生真面目な話をしてしまうのだけど、
親の小難しい雰囲気を娘は最近いやがる。
聴かれないようにぼそぼそしゃべる。
妻:もやしって、安いうえにおいしいよな
ぼく:おお、いいよな、もやし
ぼそぼそ。
妻:わ、このお茶碗 ちょっと欠けてるー。
ごはん前はなんともなかったで?
荒く洗ったんちゃう?
ぼく:いやいやいや、丁寧に洗ってたで
妻:ヒビも入ってる
なんやかんやで食器を片付け終え、
妻はシンクを拭いたり、ぼくはそのへんの洗濯物を
ザザッと片付けたりして、一日を締めていく。
娘:書けたーー!今日の宿題のお題、
「わが家の実況中継」
ぼく:ほう!
妻:読んでー
娘:えーお父さんがカチャカチャ音をたてながら、
ちゃわんを洗っています。そーして、お父さんと
お母さんのいつもの「濃い話」がでたっ。
何でもないことが、ひくい声で、しんこくに
聞こえます。濃いっ。おおーっと、床に落ちてる
くつ下を、お父さんが、思いっきりけとばしたー!
妻:ははははは
ぼく:ははははは
そんなこんなで、夜は更けていった。