【さて、どう暮らそう。】静かに佇み「食」を支える食器棚
こんにちは。
空間コーディネーターの平野です。
私がインテリアの世界に入ったのは、
25年前のこと。
右も左もわからず、ドキドキしていた
初出勤の日に、ひと目惚れした食器棚。
7年間、お客様の目に触れながら、
日に日に木目の色艶が増していきました。
そして、私が結婚するタイミングで、
現品を売ることに決まったのです。
「これは運命!」
と思い、我が家に迎え入れました。
私が結婚した頃は、婚礼家具文化が残っていて、
テーブルセットに加え、食器棚やタンスもしっかり
用意してもらいました。
そんな時代から20年が経ちました。
キッチンには備え付きのカウンター、
衣類はウォークインクローゼットが主流になり、
「大きな家具」というものが姿を消しつつあります。
我が家は今でも、タンスを1棹リビングに置いていて
子どもたちのお洋服を入れるのに重宝しています。
桐ダンスは、湿気を寄せ付けないので、
お洋服などを入れるのに最適なんです。
子どもたち2人でどの引き出しを使うかを決め、
自分たちで仕舞い、今日の洋服を決める。
片付け上手になり、自分で決められる子になり、
防虫効果があるので身体にもやさしい。
私の大好きな「一石三鳥」のタンスです。
私たちみたいに住まいを転々とする暮らし方には、
「置き家具を持つこと」が生活をより楽しく快適に
させてくれると思うんです。
日本の気候に合わせた造りの家具を持っていると、
住む場所や環境が変わっても
「大切にしてきたモノたちが気持ちよく収納される」
という安心感があります。
それは結果、住む人の心地よさにも繋がります。
話は食器棚に戻ります。
毎日、数えきれないほどこの扉を開けます。
お気に入りの器たちが並んでいる景色にホッとします。
キッチンクロスは、桐の引き出しに入れているから、
食器を拭き上げるのも安心。
そして引き出せる作業台、これがなんとも便利で。
キッチンに立つと、まずこれを引き出す。
私のお料理の手勝手に、
すっかり馴染んでくれている食器棚。
ずっと一緒に生きていきたい
家族のような大切な家具の一つです。
「お台所は生きていくための場所」
「お台所は家庭の薬局だよ」
と、薬膳の先生がおっしゃっていました。
そんな場所に静かに佇み、
毎日の食を支えてくれている食器棚。
改めて、お嫁入り道具として持たせてもらって
本当に有難かったなと感じるこの頃です。
いつの日か息子や娘がこの家具たちを
受け継いでくれたらいいな...。
食文化や慣わし、そして家具やお道具。
世代を超えて受け継ぐことの大切さも
子どもたちと肌で感じていきたいと思うのです。
最近、25年前にこの食器棚と出逢った頃のことを
よく思い出します。
あの頃は、家具の良さをおすすめするのに
一生懸命な自分がいました。
25年経った今は、なぜそれがいいのか?を
お伝えしながらお客様のパートナーを共に探す
というスタイルに変わってきました。
今の私だからお伝えできることを精一杯伝える。
想いを言葉に乗せて伝えていく。
そうすることによって、どこかで誰かに
大切にされるものが増えていく。
そんな伝播が広がっていくことを願って。