【ぼくとコペン】突きつけられる現実。道のりにあった喜び
「知ってた?俺ら、人生の1/4過ぎたって。」
友人との、ふとした会話から出てきたこんな話。
僕にとってはあまりに衝撃的だったけど、彼はただ
驚いた顔を見ながら悪びれる様子もなく笑っていた。
小学校の先生をしている彼は、その時ばかりは
まるで生徒のような無邪気な表情。
まぁ、分数表現にしたのはとても端的で
わかりやすいから、一応しっかり
先生をやっているんだなとは思う。
でもちょっと待って。
人生100年時代なんて言われてるけど、
その計算だとあなた120歳になるよ。
そんな話を不意にされたもんだから、
何に対してもやたら考え込んでしまう僕は
会話に出てきた数字が頭から離れなかった。
1人一回きりの人生。
戻れもしないし、やり直しも効かない。
その1/3が過ぎてるなんて思いもしなかった。
果たしていま自己採点したら、
及第点はとれてるだろうか。
自信を持って、振り返れるものだったろうか...
そんなことが、頭の中をぐるぐると
何周も何周も回っている。
気晴らしにコペンでドライブしても、晴らすどころか
どんどん曇っていくばかり。
こんなに数字に悩まされたのは、学生のときの
テスト以来だろう。まさか社会人になってからも、
難題を出されるとは思ってもみなかった。
あの頃、隣で一緒に頭を抱えながら悶えていたやつが、
今や先生になって苦しめてくるなんて。
ただ、どれだけ考えてみても、結局
その数字に対しての答えなんて出てこない。
考えたところで、それについての格言とか
生き方の正解みたいなものは出てくるはずもない。
テストみたいに制限時間があるわけじゃないから、
もうギブアップして、潔く答えを出してもらおう。
でも彼は「あれ、そんなこと話したっけ?笑」。
久しぶりに電話をしてみたけど、清々しいほど
綺麗さっぱり忘れていた。
これだけ人を悩ませておきながら、
反省の色を微塵も感じさせない。
「それよりさ...」なんて、娘の様子だったり
完成間近のお家でやりたいことだったり、
お構いなしで話してくる始末。
こいつ、"今"を全力で楽しんでる。
僕は後ろを気にしてばかりいるのに...
ただ、昔を知るふたりが話せば、自然と話題は
自分たちの若かりし頃に。
小学校の時の話、焼肉屋のバイト時代の話。
とても懐かしくて楽しくて、久しぶりに
腹を抱えて笑った。
あぁ、そうか。彼にしてやられた。
もしかして後ろばかり見て、考え込む意味なんて
なかったのかも。
今を全力で楽しんでいれば、自ずと振り返りたくなる
ような自分らしい道のりになっているのか。
そもそも彼が数字で伝えたかったのは、
こんなにも長いこと一緒に過ごしてきたっていう
驚きとか喜びだったんだろう。
僕は勝手に、ネガティブな問題を出されたような
錯覚に陥っていただけだった。
自分の中にあったモヤみたいなものが
少しずつ消えていくのがわかった。
ただ、「間違ってたなら謝りなさい」なんて
先生みたいに叱ってきそうなので、
このことは胸の内に。
会話の最後には、なんとも雑だけど
どこか安心できる彼らしい言葉が。
「まぁこの先どうなるかわかんないけど。
とりあえず、残り3/4もよろしくね。笑」