【ぼくとコペン】寄り道しながら、楽しみながら
たまに会話のなかで「どんなお部屋なの?」なんて
もの好きな人が聞いてくるけど、
正直どう答えようか悩んでしまう。
ダイニングに置いてあるのは、テーブルとチェア、
それと少し大きめのアートだけ。
「どんな?」に対して、しっかり答えるには
少し足りない。
今思えば、京都に招いた友人の顔にも、
そんな表情が見えたような。
インスタとかで見る、華やかな場所を想像していた
彼からすると、この味気ない場所には
物足りなさを感じてしまうのも無理はないのかも。
インテリアの世界に入って家具に触れ続けて、
知識もある程度蓄えられた。
もちろん部屋をつくる楽しさも。
これまで、先輩に習って古いものを買ってみたり、
北欧名作のチェアに憧れたり、和の雰囲気に
懐かしさを覚えたり。
ある時なんかはDIY熱が激って、
小さいコペンに木材をありったけ乗せて
自宅とホームセンターを何往復もした。
自分なりに、気の向くままに。
目標を設定せずに楽しんできたことは間違いない。
でも、周りにいる同僚たちの
こだわりが詰まった部屋と比べてみると、
かなり味気ないし統一感もない。
部屋の完成度=ステータスでしょ。
なんて勘違いしていた僕だったら、
いま頃、焦燥感に苛まれていたのかもしれない。
ただ、そんな考えに終止符を打つ、何気ない1日が。
その日は、後輩とコペンに乗ってイケアを目的地に。
インテリア好きが2人も集まれば、
そんなに計画通りには行かないのもわかっていた。
案の定、予定にない寄り道ばかりで、
お昼前にはすでに着いているはずだった目的地には
綺麗な夕日とカラスの泣き声。
「うわ、もうこんな時間。寄り道し過ぎた!」
なんて言いながらも、その顔には全然焦りはなくて、
むしろすでに満足すらうかがえる表情。
ただただ、目の前にある世界にどっぷり浸って、
無我夢中で楽しんでいる後輩の姿。
そして、それを俯瞰で見ていた自分もいつの間にか、
同じ世界に入って楽しんでいて。
2人して、あーでもないこーでもないと話しながら、
時間を忘れ、年甲斐もなくはしゃいでしまった。
何を焦っていたんだろう。
自分の部屋作りにルールはないし、
いち早く部屋のテイストを決めなきゃいけない
なんて決まりもない。
ふとお家を見渡してみると、僕なりに
いろんなところに寄り道をしながら
楽しんできた跡が散らばっている。
良いようにも悪いようにも言えるけど、
好奇心旺盛なのか、それとも飽きっぽい性格なのか。
気軽には取り替えられないインテリアには、
まあ都合は悪いけど。
自分が納得できるまで、マイペースに
楽しんでいればいいじゃんかと。
揃えるのが遅くても失敗しても、インテリアって
自己満でいいよね。
惹かれる何かがあったらそこに夢中になって、
またどこか途中でふらふら寄り道して。
後輩と何時間も悩んだ、酔っ払いなグラス。
いつもは、先輩として教えることがあるけど、
その日ばかりは、全力で夢中になっている背中と
満面の笑みに、何か根本的なものを
教えられたような気がする。
それにしても、とりあえず次に行く時は、
寄り道時間を含めた計画をたてようか。