【やわらかく、ひびく。】祈り届ける、お盆の風景
気がつけばお盆。
夏も最盛期を迎えました。
今年のお盆は実家には帰省せず、京都で過ごすことに。
いつもは実家で用意してくれるお供えたちだけど、
帰省しないとはいえ、
きちんとご先祖様をお出迎えしたい気がして
今年は自分で準備してみることに。
用意するものは、花とお菓子と・・
あとはあれだ。
精霊馬。
きゅうりを馬、なすを牛に見立てた
お盆にご先祖様が下界へ帰ってくるための乗り物。
10年程前、父の初盆のときに知った精霊馬、
大人になって知ったこの風習はなかなか衝撃的で。
「子供じみた発想・・まぁ、なんか可愛いけど」
そんな感想を持った私も、歳を重ねたせいもあってか
風習を大切にしたい気持ちも出てきて。
「よし、やってみよう!」
夏の工作気分でチャレンジしてみることに。
とはいえ、野菜に割り箸を刺すだけなのだけれど。。
完成。
あ、きゅうりはやめて、ズッキーニにしました。
きゅうりも買ってみたけれど
なんだか威勢が足りない気がして。
ご先祖様もいまや大所帯でしょうから、
安定感がある方がいいよね。
なんて、先祖が乗り合わせている様子を想像して
しっかり楽しんでいる。
私だって十分、子供じみているのかもしれない。
ゆるく迎えたお盆もつつがなく過ごし、
8月16日。五山の送り火。
精霊をあの世へ見送る京都の伝統行事。
お迎えもちゃんとしたのだから、
お見送りまできちんとしたいところ。
ただ平日のこの日は仕事終わりで
20時の点火に間に合うかどうか。
しかも夕方から、強い雨が降り出した。
今年は3年振りの全面点火だというのに。
こういう時は、自称・晴れ女の力を使いたいところ。
大切な日は、晴れとまではいかなくても、
雨は降らないからなんとかなることが多い。
だからきっと大丈夫。
そんな根拠のない自信で仕事をしていると、
就業時間ごろ、本当に雨がやんだ。
「いける。」
急いで自転車に乗って、
緩やかだけど地味に堪える上り坂を上がる。
間に合った・・と思ったのも束の間、
カメラのSDカードを部屋に忘れていた。
20時。大文字の点火開始。
静かに、でも力強く燃え盛る炎を後目に
急いで部屋にSDカードを取りに帰る。
大文字を一直線に望む細い路地に戻り、
なんとか汗だくで収めた写真たちは、
動揺を映したかのようにブレブレ。
焦っているうちに、だんたんと火の力も弱まっていく。
あーあんまりいい写真、撮れなかったな・・
人もまばらになり、静けさがもどっていく。
まぁ、こんなもんか・・仕方ない。
私も帰路につく。
帰り道。
行きしに見かけたおばあちゃんが、
まだ送り火に手を合わせ、祈りを捧げ続けていた。
こうやって人知れず、誰かの幸せを祈る人がいる。
少しだけ心を落ち着けて、振り返ってもう一度、
私も送り火に祈りを捧げてみた。
慌ただしいお見送りだったけど、
私の祈りも届いているといいな。。
家に帰ると、
リビングには大家さんからの差し入れが置いてあって
部屋に戻ると、また強い雨が降り出した。
やっぱり祈りは、届く気がしている。