【やわらかく、ひびく。】心躍る、窓辺の思い出
朝、目覚めるとまず
コーヒーを入れて、いつもの席に座る。
本をパラパラとめくりながら、ぼーっとすごす。
私のモーニングルーティーン。
横目に窓から外を眺めると、
建物と電線と空が見える。
窓の横には、お気に入りの版画。
今までもう少し低い位置に置いていたのだけれど、
最近、飾るのにぴったりなこの位置を見つけた。
モチーフは、建物と電線と空。
額縁の中の風景は、窓からの風景とリンクしている。
その風景は、大切な思い出と想いを運んできてくれる。
7年前。
オーストラリア東海岸の都市、ブリスベン。
中心部から西の外れにある、WEST ENDという小さな街。
ヒッピーの香りがするその街は、
中心部よりちょっと怪しげな雰囲気もあるけれど、
その分、カラフルでエネルギッシュ。
あの頃、WEST ENDの中のHANASHOというお花屋さんに私はいました。
1年と決めて飛び込んだオーストラリアでの生活。
英語とか海外ならではのこともそうだけど、
せっかく会社を辞めていくんだし、やりたいことは全部やろうと思っていた。
出発前に考えた、やりたいことリストのひとつ。
「インテリアやアートに関わることがしたい。」
そんなことを知り合いに話したところ、
紹介してもらってお手伝いすることになったお店。
HANASHOという名前から分かるとおり、
そこは日本人の店主・江場さんが営まれているお店。
お花屋さんでもあるけれど、
現地のアーティストの絵やオブジェ、アクセサリーも
たくさんあって、さながらアートギャラリーのような空間。
せっかくお手伝いするんだから役に立たないと!
なんて最初は力がはいっていたけれど、
江場さんの優しくてまっすぐな人柄に接して、
いろんなことに軽やかに挑戦する姿を見ながら、
ただただそこにいることを楽しむようになったんだっけ。
お手伝いするようになって少しした頃、
「窯を買っちゃったんだよー。一緒に何か作ってみる?」
なんて突然のお誘い。
そこはやりたがりの私なので、迷わずチャレンジ。
一緒にお店で一輪挿しを作ったりしたなぁー
形には個性が出るもので、江場さんのはシャープで、
私のはなんだか丸っこくて。
シャープなのがかっこいい、真似したいと思うのに、
どれだけ頑張っても私の一輪挿しはボテっとしていて。
きっと丸いのが私らしさなのだと思うけれど、
あの頃はまだ、そのことを認めるのが悔しかったりもしたなぁ。
江場さんの作品と私の作品。シャープなのと丸いの、違いが際立ちます。
あとはお隣のカフェのフラットホワイトを飲みながら、
一緒に、はっぴぃえんどとか高田渡の曲を聴いて、
日本のフォークとかロックについて教えてもらったり。
お手伝いなんてことも超えて、
そしてオーストラリアだなんてことにもこだわらず、
ただそこにいて、ただ心躍らせていた日々。
そこで出会ったのがその版画。
HANASHOの一面ガラス張りの窓から見える
街の図書館と電線と空を切り取った江場さんの作品。
最後に記念として買って帰ろうと企てていたのだけれど、
最終日に江場さんがプレゼントしてくれた。
そこで時間を過ごせたことだけで十分だったけど
こんな素敵なプレゼントまでもらってしまって。
ただただうれしくて、うれしくて。
あれから7年。
いろんなことがあったけど、ずっとそばにある大切なもの。
実は今回、このエッセイを書くにあたって
江場さんに久しぶりに連絡してみた。
私のこと覚えてくれてるかなーなんて、ちょっとドキドキしながら。
そしたら、
「元気にしてる!?家族はいたって元気。
僕はちょっとひざを痛めて週一のマウンテンバイクに行けなくてしょげています」って。
ふふ・・そうそうこの感じ^^
優しくて、軽やかに人生を楽しんでいる江場さん。
膝は心配だけど、その変わらなさはうれしい。
そんなことを思いながら、窓辺を見る。
あの頃の思い出と風景と、想いとつながる。
そういえば、やりたいことリストに
「インテリアやアートに関わることがしたい」って書いていたこと。
私いま、あの頃イメージしてたようなインテリアの会社で働いている。
あの頃の私の想いは、今も私の人生を鮮やかにしてくれて、
応援してくれているのだと思う。
あー私もまだまだこれから。
もっともっと、軽やかに伸びやかに生きよう!
額縁と窓からの景色を見てそんなことを思う、朝のひととき。