【おかえりカラー】じーっと見つめる、その先に。
2月下旬。
僕たち家族は、1泊2日の旅に出ました。
出発のほんの数日前に決まったプチ旅行。
「とにかく、牡蠣が食べたい」
僕が発したこんな一言がきっかけで、
茨城の大洗へ向かいます。
産休でお家にいることが多い妻も
なんとなくワクワクしている様子で、
せっかくならと海沿いの旅館を予約しました。
20代前半の旅といえば、
旅の予定を「これでもか」と言わんばかりに
詰めに詰め込んで、帰る頃には、ヘトヘト。
それを分かっているので、
最近の旅は、訪れる場所を絞って
ゆっくり、長く楽しむ。
これが大人の旅なのかな。
おむつも変えたし、
お着替えしたら、出発するよー。
運転しながらも
牡蠣のことで頭がいっぱいでした。
妻に、真牡蠣と岩牡蠣の違いを
力説しながらドライブしていたと思うと、
とても恥ずかしい。
「今の時期は、真牡蠣ね、真牡蠣」
と、妻の返事が無くなるまで話したのも、
今となっては良い思い出です。
近くの漁港に到着して
真っ先にいただくのは、
もちろん、牡蠣。
1口ではおさまらないほど
大きな大好物をほおばる幸せ。
そんな時に、ふと、子どもの方を見ると
なんだか不思議そうな顔をしています。
「僕も小さい時は、牡蠣の美味しさなんて
分からなかったさ」
「でもね、大人になれば、
1時間半のドライブをしても
食べる価値があるものなんだよ」
と、心の中で言いながら
3つ食べた牡蠣の分だけ
「おいしいね」
と、伝えておきました。
次は、水族館へ。
その日の海は、少し荒れ気味なのか、
遠くからでも波音が聞こえてきます。
1歳半の子どもにとっては、
初めて見る海。
どんな気持ちで見ているんだろう。
波の動きをじっと見つめて、
何かを感じているようでした。
目の前を通り過ぎるイルカを見ては、
これまたじーっと見守るだけで、
指を指したり、声を出したりもしません。
イルカが、大きく飛び跳ねる瞬間は、
「何か出てきた」ぐらいに思うのでしょうか。
少しこわい気持ちもあるはずです。
でも、それよりも
出会ったことのない生きものを見て、
観察しているようにも見えました。
クラゲも、魚も同じように、じっと。
たくさんの海の生きものを見て、
疲れたようで、旅館に着いて間もなく、
すやっと一眠り。
これは「大の字」ならぬ、
「火の字」ですね。
次の日の朝。
海風が吹く海岸に少しだけ寄り道します。
上から眺めていた海と違い、
目の前で見る波の高さに驚きました。
片時も離さない子どもの手を見て、
やっぱり海がこわかったのだと分かりました。
初めてのことって
何でもそうですよね。
大人になってからも、
初めての仕事や慣れていないことをやる前は
こわいし、緊張もします。
何でも挑戦させたいけど、
嫌にはなってほしくない。
言葉にできない子どもの様子を
じっと観察して、気持ちを考えてあげるのも
親として必要なことなんですね。
「じゃあ、石拾いしよう」
海に一度背を向けて、
石拾いを始めました。
子どもも、これは?これは?と
次々と石を手渡してくれて、
楽しそうにしていました。
持ち帰った石は、
横一列に並べて飾っています。
見る度に、楽しかった思い出と、
子どもの繊細な感情を思い出して、
「石っていいよね」
と、思うのでした。