【おかえりカラー】泣いたっていいじゃない。生後半年の赤ちゃんと親の成長記録
「今日は大泣きで、全然寝てくれなかったよ」
僕が仕事から帰ると、
妻は赤ちゃんの様子を
欠かさず報告してくれます。
散歩に出かけようとして、
ベビーカーに乗せた瞬間に
うんちをした、とか。
ゆびさしちゃんという絵本が好きで、
じっと眺めるけれど、指は指さない、とか。
もう片足がくるんって回れば、
寝返りができるようになる、とかとか。
感情を言葉にのせないタイプの妻が
思い出した順にたんたんと話します。
そんなことを聞きながら
夕飯を食べるのが僕の日課です。
僕が帰宅して、妻がリビングにいない時は、
寝かしつけの最中か、一緒に寝ていることがほとんど。
そんな時は、寝室をそっとのぞいて
2人の顔を確認してからリビングに向かいます。
ある日、妻の顔の横に
こぶし大のティッシュの塊を
見つけました。
朝方、妻にそのことを尋ねると
「何をしても寝てくれなくて、
どうしよ、どうしよと思っていたら
涙が止まらなくなった」
あのティッシュの塊は
たくさんの涙を拭いた後に
丸めて固めたものだったのです。
そんな歯がゆさの塊だったとは...。
「泣いたっていいじゃない。
お互い成長してるってことだよ」
ソファーに座りながら、
そんなことを妻に話したと思います。
そっか、そうだよね、うんうん、と
珍しくうなずく妻。
普段は弱腰の夫が、少しだけ
威厳を見せた瞬間でした。
思い返すと大人になってから
悔し涙を流したことは、
ほんの数回です。
でも、その後は、
必ず成長していたと思います。
前職で現場責任者を任された時のことです。
目の前の新しい業務に追われ、
スタッフからの質問は後回し。
さらには回答するのを忘れる始末。
営業成績が振るわないスタッフには
「やる気がない」と言い渡すだけで、
一緒に考えようとしない。
挙げ句の果てには、自分の失敗を
スタッフのせいにする。
最低な責任者でした。
そんなことをしている内に、
誰も僕の元に来なくなりました。
代わりに他の先輩の元に
聞きに行く姿を見るように。
「どうしてこんなに頑張っているのに
誰も来てくれないんだ」
という悔しさが溢れてしまい、
布団の中でむせび泣きます。
人のせいにするのではなく、
自分が変わらないと駄目なんだと、
ようやく気づきました。
そこからは、スタッフへの返答を
なによりも優先し、悩みを一緒に考え、
聞くことを大事にしました。
すると、徐々に相談してくれることが増えていき、
「お陰で試験に合格できました」なんて
嬉しいことも言われたりして。
あれから数年が経ち、
あの時のことを時々思い出しては
気持ちを引き締めています。
最近は泣くのと同じくらい
笑うことも増えた赤ちゃん。
お肉いっぱいのほっぺを広げて
目を細める顔を見ると
こちらまで笑顔に。
一方の妻といえば、
ベッド横でティッシュの塊を見たのを最後に
泣いている様子もなく、「はいはーい」と
子育てを楽しんでいる気がします。
何かしら子育てに対する心境の変化が
あったようですね。
とは言っても、
妻だけが成長したのに、
僕がこのままって訳にもいきません。
夫婦で子育てができるように、
僕も休みの日は寝かしつけや
本の読み聞かせに挑戦しています。
それがまあ、下手でして...
「なんで赤ちゃんより先に寝てるのよ」
「読むの早すぎ、もっとゆっくり」
苦難を乗りこえた妻の言葉は、
説得力があって心に刺さります。
あまりにも泣き止まない時は、
弱音を吐くことも。
夫「あのー、交代してもらってもよろ...」
妻「ダメです。頑張ってください」
ちょっとだけ、
泣いてもいいですか?