【 悠々、閑々。】ちいさな2人に映る夏の景色
「見て見て!ノーリスみたい!」
シューーッと音を立てる花火を両手に、
5つになった甥っ子が
嬉しそうに空を見上げました。
色とりどりの火花を散らす花火から
白い煙が空に上がって、
ゆらゆら風にさらわれていく。
「ノーリスってなに?」と兄に聞くと
「オーロラやわ~」とのこと。
なるほど、この子の目には
あの煙がオーロラのように見えるのかぁ...
わたしは見たことがないけれど、
彼らにとってオーロラは、すごく身近なもの。
というのも、兄の家族が住んでいるのは
ノルウェー北部の「トロムソ」という場所で、
北極圏にあるその街は、冬になると家からでも
綺麗なオーロラが見えるのだそう。
自分の家からオーロラ観賞なんて
なんとロマンチックなことでしょうか...!
そんな北欧トロムソに住んでいる兄たちが
日本に帰ってくるのは、3年ぶりのことでした。
会えないあいだに、もう一人、
ちいさな家族も増えていて。
3歳と5歳。
知らぬ間にもうすっかり男の子らしくなって、
なんだか嬉しいような寂しいような。
実家に集まって、お墓参りに行ったり花火をしたり、
岡山のいとこの家にも一緒に遊びに行きました。
高速道路や大きな吊り橋、路面電車、それから
虫除けの網戸(ノルウェーにはないんですって)、
水族館のオットセイに草むらのバッタまで。
2人からすればどれも、
はじめましての新鮮な世界。
年頃もあいまって、目に飛び込んでくるいたるものに
「これはなに?」「どうして?」と好奇心が止まりません。
わたしにとっての「あたりまえ」が、
この子たちにとっては「ふしぎ」なこと。
きっと目にするひとつひとつの色も形も
まったく違うように映っているんだろうなと思うと、
それがまたすごく不思議でおもしろい。
(ゆらゆらと揺れる水槽の光も、オーロラに見えてきます。)
大人になると、あらゆることに慣れてきて、
毎日をただ繰り返しているような
そんな気持ちになることもしばしば。
なんで?どうして?なんて、考える間もなく
季節が過ぎていきます。
でも、子どもたちと過ごした夏は、
自分の中の「あたりまえ」な日常が
いつもとすこし違った色に見えた時間。
ちいさな2人に映る夏の景色は、
とっても特別なものでした。
暑い暑いと唸る季節もようやく落ち着き、
ベランダには、すんと心地よい風が
吹き抜けるようになりました。
朝、ほんのすこし早く起きて、
外でゆったりと珈琲をのんでみる。
秋に近づいた空気と、植物の揺れる音、鳥の鳴く声。
いつも気にかけていなかったものが見えてきて
いつもの珈琲も、なんだか特別な味わい。
毎日を新鮮に感じるためには、
新しく何かを始めなきゃいけないわけじゃなくって。
こんな風に、日常にあるちょっとしたことを
特別に感じられる、そんな気持ちを
大切にしていきたいなと思います。