【 晴れのち、キッチン 】
手のひらの上の気まぐれ弁当
「あれ?今日はお弁当じゃないの?」
お昼休み、近くの定食屋さんへ行こうとすると
久しぶりに休憩が一緒になった
先輩に声をかけられ、ギクッとなる。
前まで続いていたお弁当づくりは
少し間があいてしまっている。
だれかと約束をしたわけじゃないのに、
一度つけた習慣をやめてしまうと
後ろめたさを感じるようになるのは
どうしてなのでしょう。
(ヤンニョムチキン弁当。がんばっていた頃。)
ひとり暮らしを始めて、もうすぐ2年。
とことんゆるく暮らしたい私は
「やらなきゃ」と義務感を感じると
とたんに腰が重くなってしまうと分かった。
ましてや自分へのお弁当となると
なかなかどうして作る気が起きない。
作らない日を重ねては、かえって
「作らなきゃ」という気持ちが
強くなってしまう一方で...。
だからといって無理をすることでもないよなあと
この夏は、思い切ってお弁当づくりを
お休みしていたのでした。
長く厳しかった残暑もついに終わりを迎えたのか
ひんやりと澄んだ風が吹く、今日このごろ。
「暑さでお弁当がダメになりそうだから〜」
なんて言い訳も通じなくなってきました。
さあ、そろそろ重い腰をあげますか。
お弁当づくりの長期休暇をとったおかげで
やる気が戻ってきているような気もします。
しばらくしまいこんでいた
わっぱ弁当箱を発掘する。
「がんばって毎日作るぞ〜!」と
決意して買ったもの。
手のひらの上に、まあるく収まる
小判型がかわいいんです。
ここに好きなものいっぱい詰め込んで
仕事半ばのお昼休憩、ちょっとでも
気分を上げたいなと思ったんだった。
両手で包み込んで、
杉の木のぬくもりを感じる。
これからまた、この丸い箱の中に
好きなものいっぱい詰め込もう。
そうそう、お弁当箱は
手ぬぐいで包むスタイルなのです。
この手ぬぐい、端っこから見ていくと
栗ごはんが炊き上がるストーリーに
なっていてお気に入り。
秋らしくて、まさにこれからの
季節にぴったりです。
さて、肝心のお弁当はというと...
リハビリ期間だし、と難しいものは止めにして
オムライス弁当を作ることにしました。
彩りバッチリなのに
見た目はちょっぴり豪華。
だけど、実は少ない品数で済む
ラクチン弁当なんですよね。
ケチャップをギザギザにかけたら
その上にパセリをパラパラ。
彩りを考えながら盛り付ける時間は好き。
写真を撮って、母へ送ると
「わー!すごい~!おいしそー!」と
絵文字いっぱいで返ってきました。
お母さん、実はすごくないのよ、と
ひっそり埋もれている冷凍食品を見ながら
心の中でニヤリとする。
だけど、褒めてもらえるのは
なんだってうれしくて
明日も作ろうかな~なんて思えてきます。
「一人で作って、一人で食べる」というところも
中々モチベーションを保てない理由
だったのかもしれません。
いつの間にやら早起きの眠気も
どこかへ行って、朝からごきげん。
お弁当づくり、やっぱり楽しいです。
学生時代に母が作ってくれたお弁当は、
何が入っているかお昼休みまでのお楽しみ。
フタを開けるときは
随分とワクワクしたものです。
今のお弁当は、何を入れたかも
どんな味かも分かってしまっているけれど、
きゅっと包まれたまるい箱の中には
自分でつくる楽しさと、達成感の
ワクワクが詰まっています。
お弁当づくりをいつまでも好きでいるために、
これからは「毎日作らなきゃ」と
考えるのはやめにします。
気分が乗らないときは
いさぎよく休んだっていい。
そうやって少し時間をおいたら、
この箱に好きなものを詰め込んで
母に見てもらうことにしよう。
どんなに簡単なものでも
ほめてもらえたらうれしくって。
単純な私は、きっと
またすぐにやる気になる。
私の気分だって、手のひらの上なんだから。