【ひとり、静かに。】まあるいお菓子と、あたたかな記憶
12月のある日、
瀬戸内海に浮かぶ小さな島から
1つの小包みが届きました。
かつて暮らしていた
豊島(てしま)という離島。
そこで毎年作られるシュトレンを、
今年もお願いしたのです。
熱い珈琲と一緒に、さっそく一口。
今年は柚子が入っているのだとか。
柑橘の香りがふわりと広がって、
まるで、豊島の空気を
肺いっぱいに吸い込んだような清々しさ。
真っ直ぐに優しいその味は、
どこか懐かしさも帯びていて。
美しい棚田
どこまでも青い海
豊島美術館に流れる
優しい静寂
壇山から眺める夕陽
豊島で出会った愛おしい人たち。
あの場所で過ごした日々が、
キラキラと、瞬く。
薄くカットした、そのまあるいお菓子を
一口ずつ味わいながら、
豊かな島と名の付く場所に
そっと想いを馳せました。
次の春には、
またここへ旅に出ようと、心に決めて。
豊島美術館。初めて訪れた時の胸の震えを、今でも覚えています。
私にとって、豊島という場所は、
肩の力を抜いて、深く呼吸ができる場所。
自分が、自分らしくいられる、そんな場所。
この文章を読んでいるあなたにも、
そんなあたたかな場所が
一つでも多く、傍にありますように。