公開日 2023年04月18日(火)
更新日 2023年06月17日(土)
【ひとり、静かに。】桃色の春、雪をとかして
春は残酷。
いつかに読んだ、詩の一節。
「春は残酷、」
その言葉は、声にした瞬間からこの春まで
私の心の奥にしんと積もったまま、
長い間、溶けずにいました。
![]()
4月の初め、桜の花が咲き誇り、
京都は一層、人通りも賑やか。
私は、高揚する気持ちとともに、
何故か無性に悲しくて。
その桃色を目にする度、
心の奥にまた、雪が降るようでした。
![]()
「桜は孤独だと思う。
散った途端に、忘れ去られてしまう。」
ある日、友人がぽつりとこぼした言葉。
すごくシンプルで、だからこそ、
言葉にできず積もっていた思いが
すぅっと溶けていくような。
「あぁ、私、覚えていたいんだな。」
そう、気付きました。
![]()
京都で過ごす、最初で最後の春。
最後というのは、実は1ヶ月後、
遠くの街へ引っ越すことになったのです。
生まれ育った関西には、
大切な人や場所、時間が溢れていて。
終わりが近いと思うほど、それは一層輝いて。
![]()
だけど、知っているんです。
私はもう随分大人で、
後ろ髪を引かれる思いも、
どこかでしゃんと割り切れること。
新しい暮らしにも、きっとすぐに慣れて、
自分なりに居心地の良い場所や
楽しみを見つけながら、笑って過ごせること。
そういうふうに、
今まさに抱きしめている暮らしの温度を、
だんだん忘れてしまうこと。
それはちょうど、
花びらを落とした桜の木のように。
![]()
そして、忘れゆくことが
悲しさばかりでないことも知っています。
散った後には、新緑が芽吹いて、
私たちの生活を、そっと彩ってくれることも。
![]()
だからこそ、今は、ここでの暮らしを
まとまらない気持ちや矛盾ごと、
できるだけ長く抱きしめていたい。
そう、思うのです。
![]()
春は残酷。
軽やかで、鮮やかで、寂しい季節。
さようならまで、あと少し。










maho
masha
moegi
siippo