【くちぶえエッセイ】 さよなら、キッチン
家の中には、大切な物が
たくさんあります。
それぞれ思い出が詰まっていて、
手放す時にはいつも少し寂しさを感じます。
それでも、お別れは新しい未来への一歩。
娘が大きくなるにつれて、
少しずつ増えていった物たち。
今回は、主人が作ってくれた
お手製のキッチンとの
お別れがやってきました。
この小さなキッチンは、娘がまだ幼い頃、
何度もおままごとをして遊んだ場所です。
カフェに、かき氷屋さんに、お寿司屋さん。
このキッチンを通して、
娘のいろんな顔を見せてもらいました。
柱には彼女の成長の記録が
残されています。
いつの間にかやめてしまった
成長のしるし。
今はこの柱よりも背が伸びて、
もうここに刻むことは出来ません。
そんなに大きくなった喜びとともに、
なんとも言えない、ちょっぴりの寂しさも。
最近は、娘の遊び方が少しずつ変わってきて、
キッチンを使うことも少なくなりました。
外遊びはもちろん、トランプやUNO、
人生ゲームなど、頭を使う遊びが
流行っているようで。
物はただそこにあるだけではなく、
人の成長を映し出すものなんだと
気づかされます。
「そろそろこのキッチンともお別れかな?」
そう娘に声をかけると、少し考え込んだ様子。
「今よりもっと素敵なお部屋にしようよ!」
と言うと、娘の顔に小さな笑顔が広がりました。
物とのお別れは悲しいけれど、
その先にある新しいものを想像すると、
自然と心が軽くなります。
解体されるキッチンを見ていると、
なんとも言えない、
胸が詰まるような思いがしました。
「これ、他に何か使えないかな?」
たくさんの思い出が詰まった木材ですが、
また違う形で生まれ変わってくれたら嬉しいな。
片付けが終わった後、お部屋は明るく
広々と感じられました。
物とお別れをすることは、
空間だけでなく、心にも新しい余白を
作ってくれるようです。
娘のお部屋も、すっかり変わって、
彼女自身もその変化に
満足しているようでした。
家には、たくさんの思い出や
感情が詰まっています。
その一つ一つを見送り、
新しいスペースを作っていくことは、
心の整理でもあります。
これからも家族の成長に合わせて、
また新しい物語を紡いでいくのが
楽しみです。
柱に刻まれた娘の成長の跡。
それは、過去と現在、
そして未来を繋ぐ大切な証です。
これからも、この家でたくさんの
思い出を積み重ねながら、
少しずつ未来へと歩んでいこうと思います。